2010-08-25

『Canta!Timor』の試写会に行ってきました。

8月21日。念願の『Canta!Timor』の試写会に行ってきました。
5月におこなわれたAPLAのフォーラムで、ライブで盛り上げてくれた小向定さんが制作に関わった映画です。
東ティモールの音楽とともに、これまで東ティモールがたどってきた壮絶な歴史、その中でたくましく生きてきた人びとが描かれた作品です。

この試写会を企画されたのが、虔十の会。東京・高尾山の圏央道建設から守る活動をされています。『Canta!Timor』の監督、広田さんと、虔十の会の坂田さんが、10月に名古屋で行われる生物多様性条約世界会議「COP10」を、草の根でも盛り上げていこうと準備をされている中で、映画の試写会の企画があがったということです。

まず、試写会の前に、坂田さんの案内で高尾山を散歩しながら案内をしてもらいました。高尾山には1300種類もの生物が生息していているそうです。この植物の多様さが、虫を呼び、鳥を呼び、たくさんの種類の鳥たちも、餌を探しに他の山へ飛ぶことなく、高尾山の中だけで生息ができるそうです。この多様性のひみつは、高尾山の水!小仏層郡という、縦に走っている地層が高尾山の下にはあり、その層の間を網の目のように水が流れて、スポンジのように水をためているということ。その水があって高尾山の生態系が守られ続けているのです。

坂田さんに、軽く1時間ほど歩いて話しを聞いただけで、今まで目にしているのに見えなかったこと、聞こえてこなかった音を知ることができ、感動の嵐!たくさんの発見に心が潤った時間でした。そして、長い長い時間をかけられて作り上げられる自然の世界に、とうてい人間はかなわない…という気持ちでいっぱいになりました。
圏央道の工事が始まり、今トンネルが取られ始めているそうですが、出てくる水の量のすごさに、工事がストップしているということです。高尾山からの抵抗のように思えますよね。(写真は、花の形をしたきのこです。ぶれてますが…)

そして、夜が更けた頃に、虔十の会の皆さんで立てられたツリーハウスの脇で、野外試写会が始まりました。真っ暗な森の中で見る東ティモールの映画。東ティモールの人びとも、大地と共に行き、見えない自然を崇拝し、その世界に生きてきた人たちです。映画の中で出てくる東ティモールから伝わってくるメッセージと、高尾山の森がなんともシンクロしている感じが不思議でした。
坂田さんと広田さんは、今COP10を後押ししようと、“生物多様性じぶん条約”を進めています。自分でできる生物をまもるための行動を宣言していこう!という動きです。
高尾山と東ティモール。なんの関係性もないように見えるけど、色んなことがつながっていることを感じました。東ティモールの人たちは、自分たちの国が独立したことだけに満足せずに、もっと世界をよくしていこうと考えています。私たちも自分の足元からできることをしていく、それが自然や世界へとつながっていくのだと思います。

これを機会に、みなさんも“生物多様性じぶん条約”を作ってみませんか?
そして、各地で行われている「Canta!Timor」を、ぜひ、見てください! 
(10月には東京で試写会が開かれるかも!そのときはまた告知します。)

よしざわ

2010-08-13

東ティモールで犬に・・・!?

これまでAPLAでは、東ティモールの農村の現状を把握するための調査やワークショップを現地NGOの協力でおこなってきました。それらの報告にもどづき、さらに農民たちと対話し今後一緒に活動を進めていく地域を絞り込むために、約2ヶ月にわたり東ティモールを訪問してきました。全部で7つのコミュニティでホームステイさせてもらい、一緒に生活しながら、暮らしの現状や地域が抱える問題点などをじっくり見聞きしてくることのできた2ヶ月となりました。

が、滞在中には思わぬハプニングも!今回の滞在に関しての詳細報告は機関紙ハリーナやホームページ上に後日載せさせていただくとして、ここでは、そのお話を・・・。

* * *

最初に滞在したエルメラ県のエラウロ村では、アルベルティーナさんという女性のお宅にお邪魔しました。1月にちょこっとエラウロ村を訪問して地元グループとミーティングした際に、コーヒーと一緒に出してもらった美味しいパン。それを作った人を紹介してほしい、とお願いしてアルベルティーナさんに会いに行ったときに「夜を徹してパン焼きの仕事をしているけれど、原料の小麦が高いため、仕事に見合うだけの収入がないの」と話す彼女のことが気になっていたからです。

今回は、実際にどれくらい大変な作業なのか、どれくらいの収入につながっているのかetc.を確認させてもらうために、夜を徹しての作業にご一緒させてもらえることに。

ということで、20時ころにホームステイ先から歩いてアルベルティーナさんのお宅に。必ずお菓子やご飯でおもてなししてくれるのが東ティモールの人たち。この時も、夕ごはんの「金時豆と青菜の炒め煮+白いごはん」を出してくれました。ホームステイ先ですでにごはんを食べてきていたのですが・・・笑顔で「いただきます♪」以外に選択肢はなし!苦笑

食後の休憩後、21時ころから作業開始というので、土間の台所に。コーヒーシーズン中、村にお金があふれている間は、毎日10キロ以上分の小麦をつかってパンを焼きます。それを手でこねるのだから、ものすごい力仕事。ここはお連れ合いのフィリップさんの担当で、全体重をかけてたっぷり1時間ほどこねつづけます(途中わたしも少し手伝わせてもらいましたが、数分も持たず・・・)。

 のがわ「本当に大変な作業ですね」

 アルベルティーナさん「そうなの、こねる機械を買うお金もないし・・・」

 フィリップさん「足をつかってこねる人もいると聞くけどね」

 アルベルティーナさん「えー、足で?」

 のがわ「でも、日本にも足をつかってこねる麺(うどんのこと)があるし、いいかもしれませんね」

と実際に足踏みを三度ほどしたその時・・・。

 ★△※◆☆!?

左足ふくらはぎに激痛が走り、一瞬何が起こったのかわからずに、ハッと我に返ると、火のそばで寝ていたはずの犬が近くでグルルルルル・・・とうなっているではありませんか。

そう、わたしの足踏みに驚き、恐怖を感じ、そしてとびかかってきたのでした。長いズボンをはいていたのですが、それでも傷口からは血が。それを見たアルベルティーナさんとフィリップさんはもう大変。「外国からのお客さんに何てことするの!!!」と言わんばかりに、犯人ならぬ犯犬を追いまわし、焚き木でバコバコ。大丈夫だから、と何度言っても聞いてもらえず・・・。「あぁ・・・。わたしが驚かせたばっかりに、こんなに怒られることになってごめんなさい」と心の中で謝るばかりでした。

結局、消毒だけして(万が一のことを考え、翌日ディリに戻って狂犬病ワクチンを打ってもらいましたが)作業続行。22時過ぎに生地をこね終わって、発酵を待つ間につかの間の休息です。

4時間後の夜中2時には起きて、パンを一つずつ丸めていく作業、およそ360個の成型を長女と次女も一緒に黙々と行い、それがひと段落すると、フィリップさんが台所にある自家製ドラム缶オーブンに火を起こしに行きました。そしてオーブンがあたたまったら後はひたすら焼く作業。一度に焼けるのは32個だけなので、結局すべて焼き終わるのは朝の7時過ぎという、文字通り「夜を徹して」の家族みんなでの仕事でした。



さらに、焼きあがったパンを売りに行くのも子どもたちの大事なお仕事。大きなカゴに200個ほどのパンをつめて、村の中を売り歩きます。美味しいと有名のアルベルティーナさん&フィリップさんのパン、1個5セントと安くはありませんが、あっという間に売り切れました。


かと言って、すごい儲けがあるかというと・・・。売上から原料のコストを差し引くと、結局1日に4ドルの儲けがあるかどうか。家族みんなであれだけハードな仕事をしているのに・・・と何ともやりきれない気持ちになります。どうにか改善策はないものか、と本人たちとも話をして、まずは収支をしっかり把握することから始め、値上げや商品に付加価値をつけられないかなども後々検討していこうということになりました。

追記:後日再度訪問した際に、台所には生まれたばかりの子犬が2匹。そう、あの犬、実は出産間近のお母さん犬だったのでした。ナーバスになっていたんでしょうねぇ。



のがわ