2011-11-04

【報告】2011年10月15日「何をどう食べればいいの?~放射能汚染と遺伝子組み換え作物~

APLAとして、色んな方たちと一緒に考えたいな、実践の糸口を見つけたいな、と思って10月から開始したお話会。第1回目の10月15日には、安田節子さん(食政策センタービジョン21)をお招きして、「何をどう食べればいいの?~放射能汚染と遺伝子組み換え作物~」というテーマで3.11後の食についてお話を聴きました。
東京・世田谷区のfrom Earth Cafe "OHANA"を会場に、お話の後には、放射性物質の取り込みを減らすために安田さんが勧めている「マゴワヤサシイ」ランチをいただきました。
以下、少し長くなりますが、ご報告です。

■安田さんのお話(概要)

  放出された核種は、プルトニウム、ストロンチウムを含む31種。福島第一原発からは、毎時2億ベクレルの放出がいまも続いている。仮に放出がストップしたとしても、わたしたちが生きている間に決して汚染はなくならない。それどころか、次世代まで長く影響が残ってしまう。
  郡山市は、チェルノブイリ原発事故で強い汚染を受けたゴメリ州(ベラルーシ)と同じ線量。放射線管理区域、つまり避難しなくてはいけない地域。そこで「チェルノブイリ・ハート*」の新生児が生まれたと聞いた。すでに福島原発事故の影響が出てきているのではないか。子どもには、早い段階から大量に甲状腺ガンが現れてくることが知られているが、実は大人も安全なわけではなく、時間が経てば同じ割合でガンが発症するといわれている。しかし、原発との因果関係を証明するのが難しい。だから、たとえ50代以上だとしても「食べて支援しよう!」というのには異議あり。
  放射能汚染された食品は、出荷・販売されてはいけない、というのが原則。しかし現状はほど遠い状況で、それをどう変えるか?が、わたしたちみんなの課題。
* 生まれつき重度の障がい(穴の開いた心臓)を持って生まれてくる子ども。ベラルーシでは、新生児の85%が何らかの障がいを持っているという。
http://www.gocinema.jp/c-heart/kaisetsu/kaisetsu.html

  放射線の持つ高いエネルギーで遺伝子の生命情報に傷がつき、ガンや突然変異を誘発。胎児や子どもはその影響が非常に大きい。にもかかわらず、文部科学省・原子力安全委員会が福島県内の子どもたちの限界被曝量を年間20ミリシーベルトに定めた(その後8月には「原則として年間1ミリシーベルトをめざす」と発表)。
  「放射線に安全線量(閾値)はない」というのが今日の国際的常識であり、閾値がないもの→許容摂取量は決められない→「基準値以下だから大丈夫」はウソ。ドイツの放射線防護協会は、「乳児、子ども、青少年に対しては4Bq/kg以上のセシウム137を含む飲食物を与えないように、成人は8Bq/kg以上のセシウム137を含む飲食物を摂取しないことが推奨される」と提言しているし、チェルノブイリ原発事故後、主食の麦(パン)についてベラルーシは40Bq/kg、ウクライナは20Bq/kgを基準値として定めている。しかし、日本政府は暫定基準値(セシウム137)で、主食である米についても500Bq/kgとしている。この飲食物放射能暫定基準値は、食品だけで年間5ミリシーベルトの計算になっており、しかも「暫定」ですでに7カ月以上が経過している。この数字は、非常時の我慢値であり、実は核戦争が起こった時を想定した数字であることも知ってほしい。事故後から繰り返されている「直ちに影響はない」イコール「しばらくすると影響が出てくる」ということ。
  内部被曝に関しては、飲食物によるものが9割以上を占めると言われている。放射性物質が体外に排出されるまで体内で至近距離からの被曝が続き、甲状腺異常(特に子ども)、白血病、その他のガン、白内障、不妊、慢性皮膚炎、加齢現象、免疫力低下、遺伝的影響(先天性異常)、胎児への影響(知能障害、新生児死亡など)の可能性がある。

  わたしたちが求めるべきは、全量検査。それを主張すると「非現実的だ」との声があがる。しかし、BSEが問題になったとき、日本は枝肉を全頭検査した実績がある。同じように、流通する食品の全量検査が実現すれば、「産地名」だけで選ぶ必要がなくなる。全量検査がなされていない現在、判断材料として「産地名」に頼るしかなく、それが結果的に「風評被害(と呼ばれるもの)」につながってしまう。判断材料になる数字があれば、汚染されていないものを売る・買う、汚染されてしまったものは食べない・東電に賠償請求する、という形がとれる。それは「消費者のエゴイスティックな選択」ではなく、「風評被害ではない実害」を可視化させることにもつながる。また、「買って応援する」ことは農家の被曝を容認してしまう犯罪行為だと考える。本来であれば、農業・漁業・酪農を続けたいという人に対して、移転にかかる経費、移転先での農地と農具、当面の生活費をきちんと保証することを東電と政府に求めていかなくてはいけないはずだ。

今後の食生活のポイントとしては、①放射性物質の取り込みを防ぐ、②取り込んでしまったものに関しては排泄を促す、という2点が重要になってくる。①については、(妊婦や子どもは特に)汚染のない地域のものを選び、ミネラルで身体をミネラルで満たし構造の似た放射性物質を取り込みにくい状態を保つ。日本古来の食事法をあらわした「マゴワヤサシイ*」食事がその助けになる。また、グレーゾーン地域でとれた農産物の場合でも、適切な下処理(水洗い、酢洗い、塩水洗い、ゆでる、煮る、酢漬け、発酵食品を取り入れる)である程度は減らすことができるといわれている。②に関しては、生味噌などの発酵食品、玄米、果物(ペクチンの多いりんごやみかん)などで排泄を促進することが大切。そのため、これから出回る新米に関しては、非汚染地の有機栽培の玄米を食べ、グレーゾーンなら白米で食べることをお勧めする。いま心配なのは「マゴワヤサシイ」の「シ」=しいたけなどキノコ類。残念ながらしばらくは止めたほうがいいかもしれない。あとは「サ」=水産物に関して。食物連鎖の頂点にいるような大型魚(マグロやカツオ)については、半年~一年後に濃縮のピークを迎える。水産庁はこれまでに2回ほどごく限られた種類だけを調べただけという現状。放射性核種は、魚の内臓に集まるので、臓物をきれいに除くと大幅に放射能が減少するといわれている。
  繰り返しになるが、米や農畜産物の全量検査を実施し、計測値を表示することが本来の食品の安全管理のあり方。
* マメ、ゴマ、ワカメ、ヤサイ、サカナ、シイタケ、イモ

  『沈黙の春』の著者レイチェル・カーソンは、放射性物質が農薬などの化学物質の発がん性を増幅させることを指摘していたが、身体は足し算ではなく掛け算のダメージを受ける。だからこそ、福島原発事故後の時代を生きていくわたしたちは、生命力とミネラルにあふれた安全な(=農薬や添加物を使用していない)食べものを選んで食べていくことがこれまで以上に重要になってくる。「放射能で汚染されていなければ、どんなものでもいい」という考え方は許容してはいけないし、それを推し進める環太平洋経済連携協定(TPP)は受け入れてはいけない。TPPに参加すれば、日本が現在もっている遺伝子組み換え食品の表示制度すら「貿易障害」として撤廃させられることになるだろう。
  残念ながら、日本は、世界一の遺伝子組み換え(GM)輸入国。日本で流通を認可したGM作物は、ダイズ、ナタネ、アルファルファ、テンサイ、トウモロコシ、ワタ、ジャガイモの7作物158品種+GM食品添加物14種にもおよぶ。健康への影響、農業への影響、環境への影響が明らかになりつつある。

  状況は非常に厳しいものだけれど、わたしたち消費者には、買うか買わないかを選ぶ権利がある。また、メーカーに「遺伝子組み換え作物をつかっている場合は、商品は買えません。使用しないこと、表示を明確にすることを望みます」というような声をあげることもできる。政府や行政を動かすことは非常に時間がかかるし、簡単なことではないが、企業は買い手の意見に敏感な部分もあるので、声を伝えることで変えていける可能性は大きい。一人ひとりの力は小さいけれど、みんなでつながって、立ち向かっていきましょう。(まとめ:事務局)

■参加者から質問・意見

Uさん:千葉県で友人とお米づくりをしてきており、自分でつくったお米を食べる喜びを感じていたが、原発事故の影響で今年の米づくりをどうするか悩んだ。結局田植えをし、最近収穫したが、これまでのようにできあがった新米を知人に分けることにも躊躇した。

→安田さん:検査して自分自身が数値を知ることが大切。

Uさん:看護の仕事をしているが、薬に頼りすぎない人間のもつ自然な回復力を信じている。その回復力には、栄養・睡眠・空気という前提条件があったが、それが汚染されてしまった現在、どうやって人の健康を守れるのか?そのことをずっと考えており、今日参加した。

Yさん:自分がアトピーに苦しんでいたことから、食に対する関心を持ち始め、遺伝子組み換えの問題に行き着いた。Twitterで情報収集をしており、今日のことも知った。これから魚が食べにくくなると思うが、どうしたらよいか?

→安田さん:表示制度の問題で、刺身の盛り合わせは産地を表示しなくてよいことになっている。なので、もし刺身を食べるのであれば、一種類ごとに産地がわかっているものを買って、自分で盛り合わせにするのが賢明。しかし、魚は移動しているので「産地」といっても悩ましいけれど…。

Iさん:遺伝子組み換え作物については、南米でも深刻な状況。アルゼンチンでは農地の6割が遺伝子組み換え大豆になってしまっている。日本の動きについてもどうにかしていかないと。

Yさん:食べものについて、情報を得ようとして調べれば調べるほど信じられなくなってしまう。

→安田さん:こんなに辛い想いをみんな(消費者だけでなく生産者も)にさせていることが許せない。わたしたちは政府に対してきちんと怒らなくてはいけない。

Nさん:東北に妹家族が暮らしているが、「情報や選択肢がたくさんある大都市の人たちは自分たちのことしか考えていないように映る」と言われたことがずっと気にかかっている。

Nさん:小さな子どもが2人いる。長野の農家さんとCSA(Community Supported Agriculture)に取り組もうとしている。今回のようなことが長野でも起こったとしたら、自分たちはそこでできた野菜を食べないのか?ということをずっと考えている。子どもには食べさせられないが、かといって作ってくれている人のことを思うと「食べない」ことを簡単には選べない。福島では現在進行形で起こっていることだと思うが、答えが出なくて苦しい。

→安田さん:最後のお二人が話してくださったことは、根っこは同じこと。生産者と消費者の分断も、地方と都会の分断も、わたしたちが望むものではない。そうではなくて、どう手を取り合って、「実害」を生み出した張本人たちに立ち向かっていくのか。一緒に行動していきましょう。

■Café OHANA特製「マゴワヤサシイ」ランチ

メニューは…
*お豆腐とごぼうとあらめのゴマバーグ *車麩とじゃが芋の肉じゃが風 *わかめとお豆とラディッシュのマスタードマリネ *野菜サラダ *みそ汁 *玄米

Café OHANAは、ヴィーガンのカフェなので「マゴワヤサシイ」の「サ」=魚抜きのメニューですが、こんなに豪華!店長の藤田さんからOHANAが食材について考えていることをご説明いただき、メニューを紹介していただいた後、みんなでいただきます♪

心のこもった美味しいものがある食卓だと、会話もはずみます。「勉強会」という形では決して生まれなかっただろう、参加者のみなさん同士が会話している姿が印象的でした。